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床屋で髭剃りとか首触られるのがくすぐったいから自分で髪切ってる

      2017/05/11

床屋で髭剃りとか首触られるのがくすぐったいから自分で髪切ってる

自分はもう20年くらいずっと自分で散髪していて理容室(床屋)とかずっと行ってないし美容室などは一度も行っていない。

というのも、他人に髪を切ってもらうと、くすぐったさのあまり、笑いが耐えられなくてつらいからである。

コミュ障には初めての床屋は勇気が要る

初めて散髪のために床屋というものに行ったのは中学生の時で、それまでは母親に切ってもらていた。

たいていの場合、母親に髪の毛を切ってもらうと、キノコカット、マッシュルームカット、金太郎になる。

したがって、私はそういうキノコのようなヘアスタイルで小学生時代を過ごしてきていたのだが、なぜかそういう髪型が「ダサい」「かっこ悪い」とバカにされるようになった上に、「いい歳なんだから床屋に行って散髪すべきだ」というような同調圧力が強まってきた結果、勇気を出して中学生になった際に床屋に行くことにしたのである。

初めて床屋に行く際は、どの床屋がオススメなのか、床屋に行ってなんといえばいいのか、ということを、親友に尋ねた。

思春期であることも相まって、こういうことを訪ねるのは非常に勇気のいることだから、恥を晒してもいいような、心から信頼できる友人に尋ねた。

すると、総バサミの刈り上げプリーズと言え、とだけ言われた。

総バサミ、というものがどういうものか分からなかったし、なぜ「プリーズ」と英語を使わなければならないのかも分からなかった。

しかし、それ以上質問したら「そんなことも知らないのか。世間知らずが」と思われることもまた恥ずかしかったので、自分の中でその疑問を解決しなければならなかった。

多分床屋というところは非常に気取ったオシャレな場所だから、そう行った一般的な鋏とは違った「総鋏」なるおしゃれアイテムがあるのだろうし、「プリーズ」という横文字を使うのも慣例なのだろうと推察した。

そして、すすめられた床屋に行く。

店内に入ると、イケメンや美女の理容師さんたちが、「ようこそ〇〇バーバーへ!」と明るい口調で迎え入れてくれた。

シャレオツな床屋は「床屋」ではなく「バーバー」と言う横文字を使うらしい。

明らかに皆オシャレであり、自分のようなキノコヘッドが来てはいけない場所だと思った。

しかし今更ひけないので、あたかもいつも理容室で髪を切っている風を装って、ヘアスタイルに関する雑誌などを、ごく自然な様子でめくっていた。

やがて呼び出されて、鏡の前の椅子に案内される。

「今日はどうされますか」

そういう質問が来たので、私は友人に言われた通りに、

「総バサミの刈り上げプリーズ」

と言った。

ここで、「は?総バサミってなんですか?」とか逆に聞かれたらどう答えていいか分からないし、「プリーズってなんですか?」と聞かれても返答に困る。

しかしイケメンの店員はさも当たり前のように、「総バサミの刈り上げですね」と繰り返して作業を淡々と進めた。

よかった、これでようやく床屋デビューができる。

私は大人の階段を上がったような、何かを成し遂げたような、清々しい気分になった。

これで今後はキノコカットで恥ずかしい思いをしなくて済む。

しかしその後ものすごい試練が待っているとは知る由もなかった。

首筋を触られるのがくすぐったいので笑う

店員は鋏を取り出した。

見た目は普通のはさみだった。

総バサミというからには、何かめちゃくちゃすごい大きくて長い、総合格闘技的な鋏が出てくるのかと思っていた。

あるいは、漢字で書く際は「双バサミ」なのかもしれず、その場合には、通常の倍の刃物の量、すなわち2本ではなく4本の刃物がついたダブルの量のはさみで刈り上げられるのかとも思っていた。

しかし一見すると普通だった。

そして開始早々、「う!」と声を上げてしまった。

くすぐったいのである。

「いかがなされました?」

店員が私に聞く。

しかし、「くすぐったいのです」とは恥ずかしいからいえない。

「なんでもありません」

店員は安心した様子で作業を進めた。

「小学生ですか?中学生ですか?」

「中学生です」

私は半笑いで答えていた。

「中学生ですか。部活とかやられてるんですか?」

「はい。テニス部です」

含み笑いで私は答えた。

「どちらの中学に通われてるんですか?」

「○○中学です」

「ああ、いい中学校ですね」

こみ上げる笑いを我慢するために、鏡の中の私の顔は、梅干しをチュウチュウ吸うようなおちょぼ口になっていた。目は笑っている。

会話の内容だけ取れば、ごく普通のものであって、なんら笑いの要素など含まれていない。

にもかかわらず、なぜこの客はニヤニヤ笑っているのだろうか。
あるいは、なぜ梅干しをチュウチュウ吸うような表情をしているのだろうか。
これはキモい。
それとも俺のことをバカにしているのかこの客は。

店員はそう思ったに違いない。

別に店員をバカにしているわけではない。

店員の指が私の首筋から離れると、鏡の中の私は真顔ですごくお利口そうな顔になった。

しかし、店員の指が再び私の首元に触った瞬間、鏡の中の私は、鼻が膨らんで唇がプルプル震えながら目だけ笑っていた。

明らかに、他人を小馬鹿にしたような含み笑いである。

私はそのつもりはなかったのに、顔の表情は店員を小馬鹿にしていた。

椅子に括り付けられて身動きが取れない状況で刃物を振りかざされる恐怖

さて、そのように客にバカにされたらどう感じるだろうか。

嫌だし、怒りすらも覚える。

だから私は、きっと店員から怒りを買っていたに違いないと思う。

さて、そのように怒りを買っていることを前提にして、今の私はどういう状況下に置かれているだろうか。

椅子に括り付けられてエプロンのようなケープをしている。

身動きを取ることは不可能に等しい。

そして私の真上には、ハサミという刃物を持ち、きっと私に対して怒りを覚えているであろう店員。

やる気になればやれる。

私はなすすべもない。

絶体絶命のピンチである。

私ができることといえば、この店員の怒りを鎮静することのみだ。

そのためには、含み笑いをやめて真顔になり、笑いをこらえることしかできない。

これは命がかかっているのだ。

命がかかると、私は今までの含み笑いにどうにか耐えることができるようになってきた。

これは勝てる。

そのように安心したものの、本当の恐怖はそれから始まる。

髭剃りでくすぐったいので笑ってしまう

その後シェービングというものが開始された。

どうやら、床屋では、髪を切るだけでなく、顔そりというものも行われるようだった。

一応、「顔そりはいかがでしょうか」と聞かれたのだけれども、初めてだったし、あたかも「普通顔そりくらいやるよね?」くらいのトーンでいきなり聞かれたので、それを断れるだけのとっさの反応はできなかった。

というか、顔そりがそれほど恐ろしいものであるとは最初の私には気づかなかったのである。

何が恐ろしいのかというと、それまでのくすぐったさとは比べ物にならないほどくすぐったいのである。

カミソリで首筋を擦られると、あまりのくすぐったさに「はあん」という声が漏れた。

「いかが致しましたか?」

「いえ、なんでもないです」

そして店員は続けると、また「う、う」という声が自然に漏れている。

あまりにも気持ちよくてよがっているような歓喜の息漏れのようであるが、全然その逆であり、くすぐったくて非常にツラい。

店員からしてみたら、「なんでこの客は一回一回カミソリで剃るごとにウィスパーボイスを発するの?気持ち悪いなあ」とうんざりしていたに違いない。

私もツラいので早く終わらせてほしいし、店員も辛いから早く終わりたい。

誰も得しない展開がそこに繰り広げられていた。

とにかく、絶対に笑ってはいけない。

総バサミの刈り上げ時における展開では、少なくとも刃物は皮膚に接していることはなかった。

多少笑ってしまって振動が起きても、鋏が皮膚を刺す可能性は低い。

しかし、今は通常時においてもカミソリという刃物が皮膚に密着している。

この状況で笑ってしまい、皮膚が振動を起こしたらどうなるか。

皮膚が切れる危険性が高い。

首には重要な動脈があり、そこが切れたら死ぬ可能性もある。

もはや必死の形相である。

ここで私はさらに悪いことを考えた。

床には、つい今しがた切られたばかりの私の髪の毛が散逸している。

髪の毛が床に落ちていたら、それを踏めば滑りやすい。

万が一店員が私の髪の毛に足を滑らせて態勢を崩し、手元が狂って私をカミソリで突き刺したら超痛いに決まっている。

そういえば、日本は地震大国だったなあああ。今大地震が起こって店員がズッコケタ拍子にカミソリで首をパックり切っちゃったらどうしようかなあああ。

悪い予感ばかりが募る。

やがて店員は、「もみあげはどうなさいますか?」と、手を動かしながら聞いてきた。

もみあげをどうなさる・・・?

この質問は予想外であった。

どう答えればいいのか。。。

ここで私の頭の中に、私の兄のある言葉が到来してしまった。

それは次のような言葉である。

「床屋でもみあげに関して尋ねられたら、もみあげを揉み上げてくださいと言え」

もみあげを揉み上げる。。。?

私はププーっと笑ってしまった。

いや、もみあげをもみあげる、も面白いが、もみあげを伸ばしてください、もなかなかイケてる回答だぞ。。。?

そうすると、もはや笑いをこらえるとか土台無理になってきた。

次々に面白い発想が思い浮かぶ。

「もみあげを、もみ下げてください」

ボフッとなった。

すると、あることに気づいたのである。

そのように笑っていても、全然皮膚が切れない。

店員はさも何もなかったかのようにシェービングを続ける。

客が多少動いたくらいでは店員のプロ技術にはなんら影響しないのだ。

むしろ、私が笑うことなど想定済みであると言った雰囲気すら感じる。

なんだ、笑っても大丈夫なんじゃないか。

そこで私は堪えるのをやめて、思う存分ニヤニヤすることにした。

するとどうだろう。

ニヤニヤしているということは、つまり私は今面白いことを思いついているということになる。

ニヤニヤしているならば、楽しいことを言わなければ辻褄が合わない。

そしてきっと店員は、「今この客はニヤニヤ笑っているから、きっと面白いことを次に言うぞ」と期待しているに違いない。

となれば私の選択肢は1つだ。

店員の裏をかく。

そして私の口から出た回答は、「普通でお願いします」だった。

もみあげをどうされますか?の質問に対して「普通で」とは、一見するとちぐはぐなやりとりに見える。

しかしこの「普通」と言う言葉の便利さを幅広く汲み取った店員は、当たり前のように「かしこまりました」と答えて、もみあげを普通にした。

自分で切るなら初期投資は200円

というわけで、たかが数千円でスリルを味わうことができる上に散髪もできるのだから、床屋はなかなかアミューズメント施設としてコスパがいいのかもしれないが、以降、私は自分で切ることにした。

初期投資はたったの200円であり、100円ショップで買ったすきバサミと普通のはさみの2本だけである。

あとはずっと無料。

料金が明らかに安い。安すぎる。

しかも自分の好きな時に好きなように切れるので、時間の節約にもなる。

店員との面倒な会話もしなくてすむ。

しかしこれによって自分で切ると、当然のようにマッシュルームカットになる。

一周回ってやはりキノコヘッドに戻る感じである。

しかし以前の私と違うのは、もはや「床屋に行ったことがない」と言う劣等感を乗り越えてのキノコカットなのであり、そのキノコには自信が満ち溢れている。

そして今や男でもマッシュルームカットが増えているのなどの多様なヘアスタイルが一般化しているのであり、時代がようやく私に追いついたとしか言いようがない。

加えて、私の息子も家で散髪しているのでマッシュルームカットである。

なぜ家で切ると、バリカンを使わない限りはマッシュルームカットになるのだろうか。

そう言えば先日、公園に3歳の子供と一緒に遊びに行くと、キノコカットの見知らぬちびっこ2人が遊んでいた。

そこに私の息子が入って行ったので、同じ空間にキノコヘアーが3人いた。

そして、そのちびっこ2人の両親と思しき人たちの会話から、「全員キノコヘッドだね」と言う会話が漏れ聞こえた。

私は瞬間的に、確かに、ちびっこ3人ともキノコヘアーだなあと微笑ましく思った。

しかしよく考えてみれば、彼らが言った「全員」の中には私も含まれている可能性が高いのかもしれないと思った。

キノコヘッドのちびっこ3人とキノコヘッドの大人1人は楽しく公園で遊んだ。

その両親はキノコヘッドではなかった。

多分ちゃんとした理容室や美容室でカットしているような雰囲気だった。

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